ミゲル・トラパガ
みんなでつくるマスタークラス 第三章 「左手」



左手


基礎理念

ギター演奏において、左手の使用は必要不可欠なものです。
左手を上手に使うためには、まず握力、敏捷さ、脱力という要素をしっかり把握しなければいけません。

ルネッサンス・リュートの様な古楽に見られる撥弦楽器のメソッドでは、左手各指とネックの距離を短くとるということがよく言われてきました。もう一つ重要な要素があります。それは右手と同じく各指の独立したコントロールを身に付けることです。つまり、「押弦に使わない指は脱力している。」ということです。思慮深いギタリストほど、押弦していない指に注目するものです。それは、押弦していない指がリラックスしていて、必要な時にはすぐに行動に移れる状態であるということを意味します。

指板上における手の配置について

ネックと左手の位置関係から、三つの配置法が考えられます。

弦に対して...

1)平行 2)垂直 3)複合


演奏時に、どの配置を取るべきかしっかりと把握することで、手の力みを抑え、ポジションチェンジに的確に対応できるようになるでしょう。

理想的な左手の配置を見つける良い練習法があります。全ての指を5ポジション上の一つの弦に並べましょう。(平行に)どの弦でも構いません。全ての指がいつでも押弦できる状況であることを確認したら、人差し指を小指に対して向き合うように少し曲げます。こうすることによって、全ての指先が同じ場所で押弦することができるでしょう。

4) 1弦5ポジションに配置



押弦

押弦時に注意しなければいけないのは、指先が指板に対して直立していることです。右手にも言えることですが、肘、手首、指の根元の関節、これら主要な関節は体の中心に向かって半円を描くように内側に曲がっていること。これらの関節は外側に向かって曲げるには都合が悪い関節だからです。

5) 主要な関節は内側に


押弦時に使われる握力は、最小限であるべきです。それを可能にするための練習があります。弾弦時に、音がかすれるかどうかぎりぎりの握力で押弦するのです。練習中の曲を1曲通してこのように練習するのも良いでしょう。そうすることによって握力を調整することを学ぶのです。これはとても大切なことだと思います。

押弦に理想的な場所を見つけましょう。しっかりと音質を保ち、楽に押弦できる場所。フレットの真上ではなく、ほんの少し手前の場所です。(写真6)各指が内側に巻き込むように押弦します。

6)押弦のポイント



左肩は、完全に脱力した状態であるべきです。ここで一つ実験をしてみましょう。左腕を脱力して、指先が床を指すようにしてみましょう。(写真7)演奏時に左手が指板上に配置されても、肩を上げずにその脱力した位置を保っていなければなりません。(写真8)肩の位置が上がってしまうと、各筋肉を効率良く動かすことができなくなってしまいます。

7) 脱力時の肩
8)構えた時の肩


親指

アグアドやソルの時代から、左手の親指は人差し指と中指に向き合うように配置するように伝えられています。(写真9)親指を配置する時は力を入れず、ネックを手の中に向かい入れるようにします。どんなポジションチェンジを行っても、ネックを触る親指のポイント、配置のコツは変わりません。ポジションチェンジを行う際に、親指の移動が遅れることがないように気を付けましょう。(写真10)

9) 親指と他指の配置関係 10) 親指の移動が遅れた悪い例


押弦の後

ノイズが無く、明瞭な音で演奏を行うには、押弦後の指の処理を的確に行うことが大切です。左手の各指は押弦後に2つの処理を行います。まず、鳴っている音が消えるまで、押弦に使った力を脱力していきます。まだこの状態では、指は弦から離れていません。(写真12) そして次のプロセスで、押弦した指を弦から離していきます。(写真13) この2つの処理を確実にそして迅速に行うようにします。練習を重ねれば、一気に行うことができるようになるでしょう。そうすれば、握力のコントロールを習得し、ノイズの無いポジションチェンジが可能になります。

4弦を押弦 12) ゆっくり脱力 13) 丁寧に離弦



ポジションチェンジ

アベル・カルレバーロが3つのポジションチェンジを定義しています。

・置き換え
(押弦しているフレット上の指を他の指に置き換える。押弦している「場所」が共通)

・ガイドフィンガー
(押弦している指を、同じ弦の他のポジションで押え換える。押弦している「指」が共通)

・跳躍
(場所も指も共通するものがないポジションチェンジ)

ポジションチェンジを行う際は3つの処理を行う必要があります。

指を弦から離す→移動→押弦

ポジションチェンジの間、親指はネックに対して力をかけません。

(ネックの)ポジションマークは必ず必要というわけではないですが、あれば便利で演奏を楽にしてくれるでしょう。しかし実際にポジションチェンジを行う場合、目で確認をするよりも、頭の中でプロセスをイメージする方が上手くいきます。目を閉じたままでもポジションチェンジができるように練習をすれば、たとえネックを見ながら演奏しても、より確実に処理を行うことができるでしょう。

最後に強調したいのは、ポジションチェンジの前後の音のコントロールについてです。しっかりとレガートし、特にポジションチェンジ直後の音に無意識にアクセントが落ちないように気をつけます。左右の腕をコントロールし、音の切れ目が無くなるようにしましょう。





第4章は2008年7月公開予定


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