ミゲル・トラパガ
みんなでつくるマスタークラス 前書~第一章 「構え」



前書



 友人でギタリストでもある吉住和宏氏の協力のもと、ギター演奏の基礎に関するレクチャーを始めることになりました。
 このコーナーで紹介する私のレクチャーは、基本的事項に的を絞り、アマチュアの皆様がギターへの理解を深め、上達する手助けになる様構成されています。
 ここで紹介されるアイデアの数々は、私の教授・演奏経験を通して会得したものだけではなく、私が師事したマエストロ達の影響も含まれています。
 このレクチャーに興味を持ったギターファンの皆さん、どうぞ質問や不明な点がございましたら、管理人の吉住氏を通してご連絡ください。都合のつく限り、質問に答えていくよう努力していきます。



構え


1.コンセプトと考慮すべきポイント

ギタリストにとって、正しい姿勢と構えをすることはとても重要な意味があります。体の正しい使い方を知るということは、最小限の努力で最大限の結果を得ることにつながり、さらには体を痛めることなく楽器を弾くことを可能にしてくれます。

まず重要なのは背中にストレスが無いことです。座ったときに腰からまっすぐ背骨が伸びるように、姿勢を定期的にチェックします。(*)骨盤は体を支える土台となります。演奏中はその骨盤全体に満遍なく体重がかかるように姿勢に気を配ってください。伝統的な奏法に頼るギタリストの場合、重心が左側に寄る傾向があります。

首の使い方も見てみましょう。ギタリストは左手の押さえを確認するために、首を左に回します。これも度を越すと首の筋肉を傷める原因となります。

ここでアドバイス。いつでも自分の構えをコントロールしましょう。上体の左右バランスを考慮し、左側ばかり見ないように右手や正面など視線を左右に振る工夫をします。
時には床の方向へゆっくりと視線を落とすと良いでしょう。(*)譜面台に楽譜を置きますよね。そのまま床の方へ視線を流していきましょう。そうすれば首に負荷のかからない姿勢が見つかるでしょう。

(*)


2.椅子について

ギターを弾くときに必ず使う椅子の話をしましょう。椅子は肘掛が無く、できれば座面が平らなものを選びましょう。クッションが付いたものでもかまいません。日本ではピアノ椅子が手直しされ、ギター用として売られている椅子があるようですね。とても良いと思います。ヨーロッパで一般的なピアノ椅子は、高さの調整幅がギター向きではありません。どんなに低く下げてもギターの演奏に支障をきたすものが多いのです。

椅子を演奏に最適な高さに設定するには、膝が水平になるようにします。そして左足を足台に置き、床から45度の角度に膝が持ち上がるようにします。(*1)

背筋を伸ばしバランスをとりながら、右足を左足に対して若干後ろに引く感じで構えてみてください。椅子によっては椅子を少し時計回りに回転して配置するのも良いでしょう。

ギターを体にあわせる工夫をしましょう。現在は伝統的な足台のほかにも様々な楽器支持具が手に入ります。機会があれば、これらの新しい器具を試してみましょう。ものによっては両足を床につけたままギター演奏を可能にしてくれるものもあります。体に対する負担を軽減するのは明らかですよね。(*2)

(*1) (*2)

補足 トラパガ先生は椅子の右端に座って、右足のスペースを確保しています。特別映像をご覧ください。



3.ギターと体の接点

(*3)

ギターを支える体の接点は伝統的に5つ(*3)あると言われています。左足・右足・胸・左手・右腕です。しかし私は、右腕はその接点として数えるべきではないと思っています。なぜなら右手各指が弦間移動をする際は、右腕は必要に応じて上下しなければいけません。右手各指は1弦から6弦まで弦に対し同じ角度で弾弦する必要があるからです。(*4)右腕をギターに固定し1弦から6弦に向かって演奏する場合、手首が曲がるか肘を曲げなければいけないでしょう。(*5)これでは一定の音色をキープすることはできません。

私からのアドバイスは、右腕は一点で固定せず、側板に沿わせながら腕全体を動かせるように構えることです。先程のような下降する音階を弾く場合は、肩を意識し右腕全体が後ろに向かうように動かします。(*6)ギターに肘をついてはいけませんよ。

1弦にセット(*4) (*5) 移動して6弦へ(*6)




4.脱力(リラックス)

ギターを構える際に、脱力できる姿勢を探しましょう。そうすれば練習するなかで自然にギターが上達します。

背筋が伸びるように座ります。椅子や足台を適切な高さに設定し、両足のふくらはぎに緊張がないか確認しましょう。演奏中は両肩を下げて演奏するよう心がけます。

演奏に過度の緊張が伴うと、首や顔の筋肉さえ連動します。口が半開きで演奏した覚えはありませんか?このような状況が長時間続かないようにしましょう。無意識に舌を巻いて呼吸を妨げないようにしてくださいね。

もう一つ注意しなければいけない場所があります。それは手首です。特に手首は問題をかかえやすい部位です。できるだけ脱力を心がけましょう。

以下に示すような兆候があるようであれば、専門家に見てもらい適切なアドバイスを受けてください。

首を回すときに音がする
耳鳴りがする
無意識に目が細かく動く…など

これらの問題を広く扱っている2冊の本を紹介したいと思います。
「ギター演奏法の原理」 著 Abel Carlebaro / 訳 高田元太郎 /出版 現代ギター
「THE HEALTHY GUITARIST」 著 Virginia Azagra / 出版 Acordes


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